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大阪高等裁判所 昭和43年(ネ)1307号 判決 1969年9月11日

控訴人 上野利定

右訴訟代理人弁護士 岡田善一

沢田和也

被控訴人 上野花子

右訴訟代理人弁護士 中塚正信

同 竹内靖雄

主文

本件控訴中「被控訴人と控訴人とを離婚する。被控訴人と控訴人との間の長男治利の親権者を控訴人と定める。」との原判決に対する控訴を棄却する。

原判決主文第三項以下を次のとおり変更する。

控訴人は、被控訴人に対し金八〇万円を支払え。

被控訴人のその余の金員の請求を棄却する。

訴訟費用は、第一、二審を通じ、これを五分し、その四を控訴人の負担とし、その一を被控訴人の負担とする。

この判決は、被控訴人が金二五万円の担保を供するときは、第三項に限り仮に執行することができる。

事実

控訴人――以下被告という――は、「原判決を取り消す。被控訴人――以下原告という――の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも原告の負担とする。」との判決を求め、原告は「本件控訴を棄却する。控訴費用は被告の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の主張、証拠関係は、次のものを付加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、それをここに引用する。

(被告の主張)

1  被告が岡野民子と関係をもったのは、被告が同人をしてバーを経営させてその利益金で株式売買による顧客の損失補填をしようと意図し、岡野は、被告より資金の提供を受けて自ら独立してバーを経営したいため、被告との結びつきを求めたという、両者の経済上の利益追求のためであり、二人が愛情をもって結婚生活を送ろうとしたのではない。岡野は、被告に妻子のあることを知っており、積極的に原告と被告との婚姻生活を破綻させようとして肉体関係をもち続けたものでなく、それは同棲でもない。肉体関係があったのは酔余の戯れに過ぎない。この肉体関係も不貞行為であることは否定できないが、被告と岡野との関係が右に述べたような経済上の利益追求にあり、同棲というものでもない以上、このことは民法七七〇条一項にいう離婚原因となる不貞行為とか婚姻を継続しがたい重大な事由といえるものではない。むしろ原被告間には長男治利があり、その成長、幸福には両親が必要であること、被告と岡野の関係は、愛情があった上でのことではなく、しかも既に清算されて今後肉体関係を継続する可能性のないこと、原被告間の愛情の冷却、別居は、当事者の意思によったものではなく、刑事々件による被告の身柄拘束、非常識な被害者による妻子の離隔が原因であり、そのため原告は、被告と会おうとせず、親しく語り合ったことがないこと、よく話し合えば被告の行為の動機、事情が理解され、被告の贖罪の意思が判明し、再び夫婦生活を送る可能性があること等を勘案すれば、本件は、民法七七〇条二項が積極的に適用されねばならない事案である。

2  被告は、原告に対し右に述べた事情を訴えたいと思い、度々その機会を求めたが、原告は、この機会を持たうとしなかった。

○○証券株式会社(以下○○証券と略称)は、被告が逮捕された直後の昭和三八年一〇月から一二月末まで原告を被告から隔離したが、これは原告がもと○○証券社長の秘書であったこと、同社長が原被告の媒酌人であったこと、事件後同証券が被告の家族にまで尾行をつけ、損害賠償で苛酷な態度を示し、刑事の公判廷にも社員を派遣して被告側を牽制していることから推察するに、同社は、被告憎しの余り、義理人情から原告を自己の支配下におき、被告の家族と離隔させ、被告の不行跡を誇大に吹き込み、原告をして被告との離婚を決意させ、以て離婚と親子の離別という身分上の制裁を与えることを意図したものと推察される。岡野民子が捜査官に、被告が同人に妻子はないから結婚してくれ、といった旨の供述のあることが原告にショックを与えたと思われるが、これは岡野が自分の立場をよくするため言逃れして、不実の供述をしたものである。とにかく原被告間の破綻原因の責任が専ら被告にあるというのは当らない。

3  原審は、原被告間の長男治利が被告の両親のもとで養育されているため、長男の親権者を被告と定めたが、服役していて物理的に親権を行い得ない被告を親権者と定めることは不当である。又原審は、被告が重大犯罪を犯したことや岡野民子と肉体関係をもっていたことが離婚原因となり、その責任が専ら被告にあると断じて憚らない、としながら重要な責任のある親権者を被告と定めたことは矛盾している。被告が保釈期間中に長男を引取ったのは、被告を加害者として責めたてている○○証券の支配下に我子をおくことが出来なかったことと、子供を引取れば子供恋しさから原告が帰って来て話合いの上被告の事情も分ってくれ、今後子供のため揃って努力できると期待したからであって、これを以て離婚を前提に被告が親権者を希望した意思表示と解すべきではなく、その後被告の家族が長男を養育しているのは被告の服役で子供の面倒を見れぬ以上放置できないからである。収入のない被告より、女子大を出て就職すれば相当の収入のあるはずの原告に長男を養育する資力があるというべきである。

4  原審は、原告の慰藉料請求を包括的財産分与の申立と解し、被告に八〇万円の支払を命じたが、これは原告の申立てざるところであり、被告の防禦の利益機会を奪った判断であるから、訴訟手続に違背している。原審は、所得能力その他一切の事情を掲げて八〇万円を支払えと判断したが、被告は、服役中で無収入であり、出所しても就職困難の上、多額の損害賠償の請求を受けている身なのに、原告は女子大を卒業し就職すれば、相当の収入が期待されその所得能力は高い。のみならず、被告は、昭和三八年一二月三〇日頃より今日まで長男の養育に当っている。子供は、二人の間の子供であり、その養育費が月額二万円かかったとすると、その半額は、原告が負担すべきものであり、それによる過去五年間の扶養料六〇万円を以て、原告の請求する本件慰藉料(包括的財産分与)と対当額において相殺する。又原被告の過去の同居期間は僅か一年一一ヶ月余のものであったこと、同居中、被告が特に浪費をして原告に生活上の不安や負担をかけたことも、積極的に家庭生活を破壊したこともないこと、原被告の別居は、専ら原告の意思や○○証券側の策動によったものであること、この別居が原被告間の関係を冷却させた有力な原因であること等を考えると、八〇万円という高額な慰藉料は、不相当である。

(追加された証拠)≪省略≫

理由

本件離婚及び親権者指定に対する原判決による原審の事実認定と判断は、原判決の理由の冒頭掲記の証拠に当審における証人大友一の証言、原告本人尋問の結果、被告本人尋問の結果の一部を加えて行った当裁判所の事実認定と判断の一部が一致するので、原判決理由の一全部と二の一部、即ち、原判決五枚目表四行目の初から同七枚目裏七行目の「……定めるのが相当である」までをここに引用し、次の訂正、判断説明を行う。

1、原判決六枚目表六行目の「現に服役中」とあるのを「昭和四三年一一月一三日仮釈放により出所したもの」と、変更する。

2、公文書であるから真正に成立したものと認められる甲四ないし八号証(原本の存在についても争がない。)、当審における被告本人の供述及び弁論の全趣旨によれば、被告が訴外岡野民子を識ったのは、昭和三八年五月頃であり、同人と肉体関係をもち、神戸市○○区○○町にバーを開店させたのは、同年六月から七月にかけてのことであること、被告は、当時既に自らの思惑による損失補填や○○証券在職当時株式の買入れを勧めて損失を被らせた顧客の損失補填のため、その後刑事の裁判で有罪とされた詐欺、私文書偽造、同行使、詐欺罪に該当する行為を行って、多額の他人の金員を流用し、その補填に腐心していたこと、当時○○証券は、既に退社させられていたことを認めることができる一方、妻である原告との家庭生活は、○○証券を退社後外泊の機会が多かったことを除けば普通に行われ、特に不和であったという事実もないと認められるので、被告が水商売人である岡野をしてバーを経営させた意図の多くが、これにより収益をあげ損失の補填にあてようとしたことにあり、又岡野との生活が同人を愛するが故の入浸りの同棲というものではなかったと認めることはできる。しかし、当裁判所の引用する原判決が認定しているように、被告が岡野にバーを経営させる傍ら、マンションの一室を賃借りして住ませ、同所にしばしば寝泊りしていたこと、同人と肉体関係があったことは事実であり、これを酔余の一時の戯れと、認めることはできない。又前記甲四ないし八号証によれば、被告がバーの経営やマンションの賃借、東京への遊興のため岡野民子に提供したり消費した金員は、八〇〇万円から九〇〇万円という額に上り、そのうちには可成りの遊興のための浪費が含まれ、かつこのバーの経営が収益を意図に細心な計画のもとに行われたと認められる証拠はないので、被告の岡野に対する意図が経済上の利益追求にあったとしても、その行為が原告に対する不貞行為であることを否定することにはならない。当審における原、被告各本人尋問の結果によれば、当裁判所は、被告が犯した罪の動機が証券業界特有の思惑に端を発し、いわゆるノルマというものに責められたということも全く嘘とは思われず、妻である原告が被告の今後の贖罪を信じて宥恕する気持に転じてくれるとよいと思わぬではないが、原告は、被告が刑務所を出所した今日においても、被告や長男治利への愛情をもたず、被告に対し強い不信感をもち、話合いの機会すらもとうと思っていないことが認められ、これに到った原因は、夫としての被告がもたらしたものというほかないのであるから、原告の本訴離婚請求は理由があり、この場合を以て民法七七〇条二項により原告の請求を棄却すべき場合とは認められない。

3、被告は、原告と被告との今日の破綻は、原告の意思によったものでなく、○○証券社長大友一らの離間策のためであると原審以来屡々主張しているが、当審における証人大友一の証言、原告本人尋問の結果によれば、昭和三七年、当時○○証券の社長であった大友一は同郷人である○○信用金庫の木本理事長から、そこの営業部長金子弘一の長女である原告に良縁があったらと世話を頼まれ、これを被告に勧めた結果、原被告の婚姻が成立したこと、しかし、大友一は、被告を社員として使用していたが、深く人物を調査したり信用して原告との縁を媒酌したわけでもなかったこと、同人は、被告が刑事々件で逮捕され、新聞紙上でも大きく報道されたため、世間体を恥る原告や原告の実父から頼まれ、被告が逮捕されて間もない頃から同年一二月末まで○○証券の桜井寮に原告と長男治利を住まわせたことこれは大友が被告を原告に世話したことへの贖いと反省の気持から出たものであることを認めることはできるが、原告が被告との離婚を求め、長男を引取って育てる気持のないことは、原告の意思に基づくことであり、第三者の離間策に基づくものとは認めがたいので、この点に関する被告の主張は採用しない。これらを含め被告は、破綻原因が専ら被告にあるのでないと強調しているが、これが被告以外のものにあるという証拠、根拠はない。被告の職業上の破綻が今日の悲劇を招いたとはいえるが、これはやはり被告の責に帰すべきものである。

4、被告は、長男治利の親権者を被告と定めたことを不当としているが、当審における被告本人尋問の結果によると、被告は昭和四三年一一月一三日に刑務所を出所して、現在働いていて月収七万円を得ていること、長男治利は既に満六才を過ぎていることが認められ、又既に認定したように被告は昭和三九年以来進んで長男を引取り、服役中は被告の両親の同胞、特に姉がその養育に当ってきたのであるから、原告が○○○大学を卒業し就職すれば可成りの収入を見込めるとしても、当審における原告本人尋問の結果によれば、原告は被告と別居を余儀なくされて以来定職といえるような就職をせず実家に帰ることもできず、母方の親族の家で家事手伝をし小遣程度の収入があるにすぎないことが認められる。以上の事実や長男治利の養育その他を考えるとき長男治利の親権者を被告と定めることは相当であるから、この点に関する被告の主張は採用できない。

5、次に、原告の被告に対する金一〇〇万円の請求について判断することとする。原告が本件訴状において、本件離婚原因の事実により原告の受けた肉体的、精神的損害に対する慰藉料は金二〇〇万円をもって相当とするが、そのうちの金一〇〇万円とこれに対する訴状送達の翌日から完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、かつ、原審第一六回口頭弁論期日において、従前主張の慰藉料金二〇〇万円をもって、被告との離婚において求める金銭的財産的給付の全部とするものであり、本訴では右の趣旨の金二〇〇万円のうち金一〇〇万円の支払を請求すると釈明したことは、本件記録により明らかである。原審が右釈明をもって、包括的離婚給付としての財産分与、即ちいわゆる包括説による財産分与の申立があったものと認めて判断したことは、原判決の理由により明らかである。離婚による財産分与は、本来家事審判事項で(家事審判法九条一項乙類五号)、非訟事件として家庭裁判所の管轄に属するが、夫婦の一方が提起する離婚の訴においては、通常裁判所は、申立により財産の分与をなさしめることができる(人事訴訟法一五条一項)のである。しかし、通常裁判所が離婚の訴におい財産分与をなさしめることができるためには、必ずその申立があることを要する。原審における前記の釈明が財産分与の申立に当るかどうかを検討するに、原告の右釈明は、「財産分与の申立をする。」との用語を用いず、慰藉料金二〇〇万円をもって、被告との離婚において求める金銭的財産的給付の全部としてうち金一〇〇万円を請求するというのであり、その用語において熟さぬものがあり、財産分与の申立をする趣旨か否かいささか明確を欠くが、離婚による財産分与と慰藉料とを離婚給付として包括的にみる見解もあり、原告の前記釈明は、この見解に従ったものと解せられるから(当裁判所は、必ずしも右見解を支持するものではないが)、原告の右釈明の趣旨中には、財産分与の申立を含むものと解し、この申立についても判断することとする。

離婚による財産分与と慰藉料との関係については、(一)、財産分与の中には損害賠償(慰藉料)を含むとの説、(二)、財産分与請求権と損害賠償請求権とは本来別個の権利ではあるが、財産分与に当っては、損害賠償も考慮されるとの説、(三)、両者は全く別個の権利であるとの説等の諸説がある。思うに、財産分与請求権は、必ずしも相手方の離婚につき有責不法の行為のあったことを要件とするものではないが、離婚による慰藉料請求権は、相手方の有責不法な行為によって離婚するのやむなきに至ったことにつき、相手方に対し損害賠償を請求することを目的とするものであるから、財産分与請求権とはその本質を異にする。従って、権利者は、両請求権のいずれかを選択して行使することもできるし、両者を併せて同時に請求することもできるのである。ただ両請求権は、互に密接な関係にあり、財産分与の額及び方法を定めるには、一切の事情を考慮することを要するのであり(民法七六八条三項)、右一切の事情のなかには慰藉料支払義務の発生原因の事情も含まれるから、右事情も斟酌されるものと解する(最高裁昭和三一年二月二一日判決、民集一〇巻二号一二四頁参照)。本件につき考えるに、≪証拠省略≫によると、原告と被告とが婚姻して同棲した期間は、約一年一一ヶ月の短期間であり、その間原告は、いわゆる主婦として家事に従事し、被告に扶養されていたのであり、現在原被告間には離婚に当り清算すべき共有財産はなく、かえって、被告は、訴外○○証券株式会社に対し約金一億円に近い損害賠償債務を負担していること、原告は、前記のように現在被告に対し全く愛情を喪失し、会うことすら回避している実情にあることが認められる。従って、原告は、被告に対し共有財産の清算や離婚後の扶養的要素を斟酌する余地はないから、原告から被告に対する財産分与の請求は、理由がないものというべく、慰藉料的要素の斟酌は、別にその請求があるのであるから、そこで請求すれば足るものと解すべきである。

そこで、慰藉料の請求につき判断するに、既に認定したように、本件離婚原因については、被告に専らその責があるものであるから、被告は、原告に対し、その被った精神的苦痛に対し慰藉料を支払うべき義務があることが明らかである。そして、既に認定の被告の責に帰すべき離婚原因事実、原告の被った精神的打撃、原被告双方の年令、所得能力、婚姻継続年数等一切の事情を合せ考えると、右慰藉料の額は、金八〇万円をもって相当とする。そうすると、被告は、原告に対し、慰藉料として金八〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな昭和四〇年一月二三日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払義務がある。

次に、被告の相殺の抗弁につき判断するに、被告の主張する自働債権は、原被告間の長男治利に対する過去五ヶ年間の扶養料の半額金六〇万円であるところ、扶養権利者を扶養してきた扶養義務者が他の扶養義務者に対して求償する場合における各自の扶養分担額は、協議がととのった場合は、それによるべきであるが、協議がととのわないかぎり、家庭裁判所が審判で定めるべきであって、通常裁判所が判決手続でこれを定めることができないものと解すべきである(最高裁昭和四二年二月一七日判決、民集二一巻一号一三三頁参照)。しかるに、原被告間において、長男治利の扶養料の分担につき協議があったこと、又は協議に代る審判があったことについては、何ら主張、立証がないから、被告が原告に対し、その主張のような扶養料の請求権はないものというべきである。のみならず、原告の被告に対する前記請求権は、被告の不法行為に基づくものであるから、民法五〇九条により、被告は、相殺をもって原告に対抗することができない。右相殺の抗弁は、採用できない。

6、本件離婚の請求、親権者の指定につき、以上と同旨の原判決の部分は、相当であって、この部分の控訴は、理由がないから棄却するが、金員の支払を求める部分の請求についての原判決の判断は、独自の見解によるもので、本判決の理由と異る部は、相当でないから、この点において被告の控訴は、一部理由がある。即ち、原判決は、主文第三項において「被告の原告に対する財産分与を金八〇万円とする。」と財産分与額を形成しているが、それは、原判決が離婚による財産分与と慰藉料とを包括的にみて、原告の金員の請求を包括的離婚給付としての財産給付とみる見解をとったために、さように給付義務を形成したものと解せられる(原判決の理由により明白である。)。しかし、財産分与の請求が認められないこと、財産分与請求権と慰藉料請求権とが本質的に異ることが既に認定したとおりであるとすれば、原判決のように支払義務と額とを形成する必要はなく、損害賠償の請求中、認容しないものは棄却すべきである。この点において、原判決主文第三項以下は、本判決主文第三項以下のとおり変更さるべきである。なお、原告は、被告に対し、前記のように金八〇万円及びこれに対する昭和四〇年一月二三日から支払ずみまで年五分の割合による損害金の支払を求めることができるのであるが、原判決は、金八〇万円の支払のみを命じており(この金額は、原判決によれば、原判決の説示する意味における財産分与であるが、実質的にはいわゆる離婚慰藉料であることが明らかである。)、これに対し、原告から付帯控訴の申立がないので、原判決の認めた金八〇万円の範囲で原告の請求を認容することとする。

よって、民訴法九六条、九二条、八九条、一九六条一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡野幸之助 裁判官 宮本勝美 菊池博)

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